成果を最大化させる動画広告の作成方法

動画広告のクリエイティブ制作で、失敗したくないという事業者の方もいるのではないでしょうか。

動画広告というと、最近ではテレビCMのみならず、YouTube広告やタクシー広告、また、渋谷の街頭広告など、見せていく場所やツールが多様化しています。また、5Gの流れもあり、オフラインのみならず、デジタルデバイス上で盛んに使用されるフォーマットとなっています。

特にマス広告(テレビCMやタクシー広告、新聞広告、看板広告など)となると費用が高額で、失敗ができない状況であることが多くなります。

本記事では、マス広告の中でも、動画広告のクリエイティブの作り方について解説いたします。

 

動画広告の制作に必要な11ステップ

ー動画広告には様々な種類があります。まず初めに、動画広告の主な種類を教えてください。

動画広告には大きく2つの種類があります。

1つ目は、テレビCMやタクシー広告のようなマス媒体に出稿する動画広告です。これらは「ブランド広告」や「ブランドの機能を伝える広告」になります。比較的、広告制作費や放映費が高額になる動画広告です。

2つ目は、SNSなどのデジタル媒体で流す運用型の広告です。運用型の広告は、予め定められたフォーマットに入稿することによって簡易的に動画が制作されることが多いと思います。リチカさんを代表とする、予め定められた動画フォーマットを提供し、運用をサポートする代理店会社も多数出てきております。

デジタル媒体で流す運用型の広告は、ブランド認知を高めるための広告というより、購入などの最終アクションを目的としたデジタルマーケティングに分類されます。

 

ー各事業フェーズで、相性の良い動画広告の出稿先はありますか。

数十億円単位での予算を使用すると想定したときに、impressionや一人当たりへのリーチ単価は、デジタル広告よりマス広告の方が安くなることが多々あります。

デジタルを生業としている大手のエンプラ企業が絶えずTV広告を流し続けるのは予算が大きいことはもちろんですが、マス広告の方が、リーチ単価という観点において、コストパフォーマンスが良いことを理解しているからです。

しかし、マス広告は多くの事業主の方にとって出稿のノウハウが乏しく、かつ動画の制作費も高額となる場合があり、着手が難しい媒体とも言えます。そのため、多くの事業主の方はデジタルマーケティングを優先的に行っているのが現状だと思います。

デジタルマーケティングを行う中で、デジタル広告でリーチ可能なユーザーを獲得しきれていないブランドは、マス広告を用いて認知を拡大していくよりも、デジタル広告で売上を伸ばしていくフェーズにあります。

したがって、そのようなフェーズでは広告クリエイティブにコストをかけずに出稿できる媒体と相性が良くなります。

一方で、広告予算を十分に割くことができるブランドや、デジタルマーケティングでリーチ可能なユーザーをある程度獲得しきった中規模から大規模のブランドでは、認知を拡大して売り上げを作るフェーズにあるため、テレビCMやタクシー広告、YouTubeといったマス広告と相性が良くなってきます。

さらに言うと、デジタルでリーチできるユーザー層や人数にも限界が出てくるため、マス広告に着手しないと、パイが広がっていかないという側面もあります。

 
 

ー動画広告への着手を決めた場合、どのような流れで出稿まで行くのでしょうか。

以下の10のステップを経て出稿します。

1.  動画広告を出稿する目的を整理

まず、作成する広告を誰に見せるのか、広告を見たユーザーに何を理解してもらい、何の行動をしてほしいのかを、整理します。

制作するクリエイティブの中身の話ではなく、何故動画である必要があり、TVやタクシーなどの特定のメディアで広告を打つ目的を、ターゲットの観点でまとめます。この時、避ければいけないのは、目的を社内的な理由にすることです。

「他社が実施しているから」とか「調達をした結果、とにかく広告に予算を投下しなければならないから」といった目的が先に出てしまうと、後のメディア選定や、クリエイティブの中身の方向性がブレるため、あくまでも消費者ターゲットを起点に目的を設定します。

2. 「何人に、何回広告を見せるか」というリーチとフリークエンシーのKPIを整理

広告出稿の目的に応じて、「認知率を〇%上昇させる」「コンバージョンを〇件獲得する」「指名検索を〇件増やす」というように、最初に定めた目的をKPI化します。

KPIを達成するために、ターゲット消費者の何人に何回広告を見せると、認知率がXX%上がり、その内XX%の人が指名検索をしてくれ、その内XX%の人が実際に問い合わせをしたり、製品の購入を検討する、といった仮説を立てていきます。

ここのKPIの細分化がない限り、広告投下後のレビューは不可能なので、仮説でも良いので、必ず設定していく必要があります。

3. KPIに基づいて、出稿先メディアの選定と出稿量を整理

2の設定により、例えば、認知率を2%から5倍の10%にしたい時、「このブランドを知っていますか?」という質問に対して何人が「知っている」と答えれば良いかが必然的に求められます。

それらの数字を基に、何人の人にリーチをし、リーチした人がどの程度広告に触れれば良いかをKPIとして設定することにより、広告の出稿媒体と出稿量を決定していきます。

KPIによっては、テレビである必要がないかもしれないし、テレビでないと達成できない目標かもしれません。このシミュレーションが正確であれば、使用するコストの回収やKPIに対する広告の寄与率を逆算することができます。

4. 広告クリエイティブの中身を作成するためのブリーフィングを作成

広告クリエイティブを制作する際には、「そのクリエイティブが、定めたKPIを本当に達成できるのか」に重点を置いて制作します。そのため、ここで改めてwhoとwhatの設定やユーザーに達成してもらいたい事が何かを整理します。

ブリーフィングの詳細については後述するので、ここでは一度飛ばします。

5. エージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)の選定と実際のブリーフィング

4で整理したブリーフィングを基に、制作したい広告クリエイティブの方向性を得意とするエージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)に依頼する形になります。

6. エージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)の提案に対するフィードバック

本工程が、非常に重要になります。エージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)は、事業者ではなく、動画のクオリティを最大化するプロなので、時としてエージェンシーからの提案は初期に設定した目的からブレることもあります。

提案自体が動画の質という観点ではとても素晴らしくとも、事業者側が定めた明確な目的に沿っていなければ、効果は出ません。良い動画と、良い広告は必ずしも一致しないこともあるので、エージェンシーとの強い信頼に基づいた、事業者側の質の高いフィードバックは成功の鍵を握ると考えています。

私の知る限りでは、「5. 質の高いブリーフィングの作成」と、「6. エージェンシーからの提案に対する質の高いフィードバック」は、多くの企業では出来ていないのが正直なところです。

7. ストーリーボード(絵コンテ)を確定

絵コンテは、15秒〜30秒の中でどのようなストーリーを描くかを漫画のような形で描写したものになります。実際に撮影していく内容をストーリーとして描写し、これを元に撮影の準備に入ります。

8. PPM (プレプロダクションミーティング)

PPMと表現しますが、実際に撮影に入る前の最終チェックの工程で、演者の衣装や、再映のセットなど細かく確認を進めていきます。

9. 撮影

内容によりますが、一般的には1-3日ほどで撮影を完了させます。エージェンシーや制作会社と一緒に撮影に臨み、イメージしているカットになっているかを、実際に立ち会って確認していきます。

10. オフライン

オフラインとは、8で撮影した素材を組み立てて、映像としてフローに載せていく過程になります。「狙い通りの尺になっているか」「メッセージは伝わるか」など、動画全体の流れを確認する工程になります。

11. オンライン

「10. オフライン」を経て、オンラインではカラーグレーディングと呼ばれる動画の彩度や明暗などの調整や、細かいリタッチ、音楽の調整など、動画を最終化するステップになります。

 

以上の11ステップを踏んで動画広告が制作されます。これらのステップを適切なリードタイムを設けて進めていくことが大切です。

 

広告の明暗を分けるブリーフィング

ーブリーフィングは、具体的にはどのような工程ですか。

ブリーフィングとは、事業主が、動画を作成する人に対し、アウトプットを依頼するキックオフの会議です。企業によってはオリエンテーション(オリエン)ということもあります。

 

ーブリーフィングには、どのような人が関わりますか。

会社によりますが、広告クリエイティブの最終的な意思決定者は、参加する必要があります。具体的には、ベンチャー企業であれば経営陣、大企業であればブランドマネージャーやCMOに近いマーケティング責任者などは、必ず参加するべきです。

ただし、意思決定者自身がエージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)とのやり取りをしたり、広告クリエイティブ制作に関わり過ぎたりすると、広告クリエイティブを客観的に判断できなくなる場合があるので、できれば一般的なマーケティング担当者を1人付けるべきです。ブリーフィングに当たっては原則その2名がいれば十分です。

逆に、様々な役職の人が参加すると方向性がブレやすくなります。ブリーフィングの時点でそのような方々の意見を反映することは大切ですが、特にエージェンシーとの会議では最大3人程度を目途に、大人数は避けるべきです。

 

ー「ブリーフィングが全てを握る」と言われますが、ブリーフィングはなぜ重要なのでしょうか。

ブリーフィングが重要である理由は大きく3つあります。

1つ目は、目的を明確にできる点です。

ブリーフィングを行うにあたり、何を達成したいのか、そのためになぜ動画広告を作成するのか、ターゲットは誰なのか、何を伝えたいかなど、動画広告を通じて達成したいことが整理されていきます。

この工程がない状態で、とりあえず動画を作りたい、とエージェンシーと会話をしてしまうことは非常に危険です。

2つ目は、時間通りに制作を進めやすくできる点です。

クリエイティブ制作は、時間をかけようと思えばいくらでも時間をかけることができます。

その際、ブリーフィングがあれば、議論がブレることが少なくなり、最終的に時間通りに完成にたどり着きやすくなります。

ブリーフィング自体の制作には時間がかかりますが、一度ブリーフィングを作成することで議論が目的から逸れることを防ぎます。

3つ目は、エージェンシーと密なチームワークを図ることができる点です。

ブリーフィングを通して、目的に応じた共通ゴールをエージェンシーと共有することができます。熱のこもったブリーフィングは、エージェンシーの皆様には伝わりますし、自社の動画広告に対する本気度が反映されます。

また、明確な目的が共有されることによって、同じ目線で動画制作を行うことができ、双方にとって納得感の高いアウトプットを生み出すことが出来ます。

 

ーブリーフィングに入れるべきポイントを教えてください。

ブリーフィング作成で入れるべきポイントは以下の11個の項目です。

1.背景と現状

事業主の状況や事業を進める中で課題に感じている点を述べます。

2.目的

上記で繰り返している通り、動画広告を実施する目的を整理します。

3.KPI

その目的を達成する上で、何をもって成功とするかを定めます。

4.ターゲット顧客

自社の製品・サービスのターゲット顧客はもちろん、動画を見せていきたいターゲットが個別に入れば、それらも詳細に書いていきます。

5.ユーザーが抱えているニーズ・インサイト

ユーザーが現在抱えている悩みや困り事を書いていきます。ニーズやインサイトが深堀されていればいるほど、質の高い広告訴求になります。

6.インサイトに応える、自社のベネフィット(便益)

ここでのポイントは、5であげたインサイトやニーズに答えている便益に限定することです。自社の製品やサービスでのポイントを箇条書きで羅列するのではなく、ポイントを絞って訴求する内容を明確にすることが重要です。

7.ベネフィット(便益)の根拠

上記のベネフィット(便益)を提供する裏付けとなる根拠を指します。この根拠は、RTB(Reason to Believe)と呼ばれるもので、提供するベネフィットに対する根拠も同様に表現することによって、ターゲットの納得感が高まります。

8.CTA(Call to Action)

行動を起こすための最後の一押しです。例えば、「業界No1」「98%の人が満足した」「今だけ」「キャンペーン中」などの文言がCTAに当たります。

9.予算

広告制作・メディアそれぞれに対する予算を明確に伝える必要があります。

10.スケジュール

11.その他の注意事項

例えば、同タイミングでデジタルマーケティングの広告運用も行うため、静止画の撮影も平行して行うこと、特定のタレントの希望、契約期間、などの補足事項を記載します。

 

上記の11の項目をブリーフィングに入れ、エージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)に説明します。

よくある誤りが、事業を進める中での課題や自社のサービス説明を行い、後はエージェンシーに丸投げしてしまうケースです。このような依頼の仕方をすると、広告出稿の目的や広告のKPIがブレてしまうので、基本的に事業主が明確なブリーフィングシートを作成し、自ら説明することが大切です。

 

ーエージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)へのクリエイティブ作成依頼は、「自由に作成してください」というスタンスではなく、「このような方向性で作成してください」という枠組みを作るイメージでしょうか。

ブリーフィングは、あくまでブレない筋を作るようなイメージです。

厳しくエージェンシーを縛るという意図はなく、クリエイティブ作成の上での自由度を与えつつ、ブリーフィングの内容に基づいてクリエイティブを作成してもらう芯を固めることが重要です。

 

ブリーフィングから撮影へ

ーブリーフィングを終えて、実際に動画広告を制作する(撮影する)上ではどのような点を意識しますか。

主に以下の4つを意識してます。

1. 大前提として、ブリーフィングに記載した目的を、その動画広告によって、本当に達成できるのかを、常に立ち返ります。

2. 1と被りますが、自分たちやエージェンシーが喜ぶだけのクリエイティブになっていないかを常に客観的に見る必要があります。

ブリーフィングに記載した顧客のインサイトやベネフィット(便益)を捉えているかを見ると良いでしょう。

3. 15秒や30秒の枠に収められるかも重要なポイントです。

絵コンテの段階では分かりやすい演出でも、実際には駆け足になってしまう場合や、ストーリーが上手く繋がらないことがあります。そのため、尺の中にきちんと収まるかどうかという点に注意します。

4. これまで作り上げてきたブランドイメージや、これから作っていきたいブランドイメージと乖離がないかを確認します。

マス広告は過去から積み上げてきたものを一瞬で覆すパワーがあります。そのため、過去に積み上げたブランドイメージを、これからも継続的に伸ばしていけるような設計が出来ているかどうかには常に注意しています。

 

ー動画広告を制作する上で、陥りやすいミスがあれば教えてください。

よくある制作上の失敗としては、

  • 尺に収まらない
  • 自分たちが楽しいだけの広告になっている
  • 製品名やブランドネームが伝わらない
  • 広告の内容が伝わらない
  • 広告の中で使用している言葉が難しい
  • 専門的な言葉を使用している
  • 冗長な表現が含まれている

などがあげられます。

近年では、コンプライアンスや炎上リスク、LGBTの方への配慮など、意図していない部分にも細心の注意を払います。

また、媒体に応じたフォーマットになっているかも重要なポイントです。例えば、テレビでは見やすい一方で、スマートフォンでは見づらくなっているパターンはよくある事例です。他にも、タクシー広告は、テレビCMと尺が異なっていたり、音が小さかったりします。

このように媒体に応じた広告クリエイティブの設計が出来ているかどうかにも注意を払う必要があります。

 

ー媒体に応じた広告クリエイティブの設計について、より詳しく教えてください。

テレビCMは、あらゆるメディアの中で最も多くの人にリーチできるチャネルです。そのため、大衆的で誰にでも理解してもらえ、多くの人ができるだけ好感度を持つ内容にする必要があります。

また、テレビCMはテレビ局による考査(広告主のサービス内容や広告内の表現が放送基準を満たしているかをテレビ局が判断すること)が厳しいので、考査に通るような内容である点も重要です。

 

タクシー広告は、経営者や意思決定者、ビジネスパーソンが多いので、ビジネス用語や専門用語をプロ仕様の表現にすることが重要です。

また、比較的ゆったりとした環境で広告を視聴するため、内容を作り込むことが多い傾向にあります。テレビが自然と目に入ってくる媒体であり、広告クリエイティブに対する集中力が低い一方で、タクシー広告は集中して視聴されることが多いのが特徴です。

他にも、タクシー広告は音が小さいので字幕を入れることなどに注意します。

 

WEB(YouTubeなど)動画メディアは、スマートフォンで見ることが多いので、小さい枠でも視認できるよう意識します。

また、音がなくても理解できるようにしたり、スキップされる前に伝えたいメッセージを盛り込んだりする工夫が大切です。

 

動画広告を成功に導くために

ー動画広告に着手する上で、Brandismはどのようなことができますか。

当社は、基本的に全ての工程を行うことができます。ただし、我々自身がカメラを回すことはできないので、実際の撮影はエージェンシーや制作会社と行い、メディアへの出稿・バイイング(テレビCMなどの買付)部分は、広告代理店と協働をして行います。

特に我々特有の強みとしては、広告制作の目的整理、KPI設計、KPI達成のためのメディア媒体の選定、エージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)へのブリーフィングと、フィードバックを行う工程に強みを持っています。

つまり、事業主の経営側・マーケティング側の担当者としてサポートを行うことになります。

ブリーフィング作りは、広告制作における戦略の根幹となるが故に、経験がない事業者からすると、非常に難易度の高い工程になります。一方で、ブリーフィング作成をスキップしてエージェンシーと制作を進めると、良いアプトプットがえられないケースが多いです。

我々としては、ブリーフィング作成を内部の人間としてサポートすることが強みになっています。

また、要望があればストーリーボードや絵コンテの制作も自社で行い、エージェンシー的な要素もカバーすることができます。

 

ー最後に、動画広告の制作にお困りの方にメッセージをお願いします。

動画広告は会社にとって大きな投資であり、大きな意思決定になります。

特に、マス広告はコストが高く、多くの人に見てもらうことができる媒体で、ブランドイメージやエクイティに対し、マーケティング施策の中でも最も大きなインパクトを与えるといっても過言ではありません。

したがって、経営陣やマーケティング責任者を含めてフルコミットで取り組むべきだと思います。

また、フルコミットした結果、効果を得るためには、最初に綿密な目的を設定し、それに紐づく上流の目的の設定や、KPI設計が成功の可否を握りますので、広告制作の工程ではなく、社内での戦略設計に是非時間をかけて欲しいです。

また、設定したKPI達成のためには、クリエイティブの品質が重要であり、そのようなクリエイティブをエージェンシー(広告代理店もしくは制作会社)から引き出すための手綱握りも重要となります。

社運をかけた投資になると思うので、経営者・マーケティング担当者の皆様が妥協せず、良いアウトプットを出せることを応援しております。

動画制作を始めとしたマス広告の出稿を検討している事業者の方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。