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2020年ごろからブームが始まったD2C（Direct to Consumer）とは、ECサイトなどで自社製品を消費者に直接販売する仕組みを指します。
顧客との関係構築を直接コントロールできるほか、より細かな顧客データの収集や蓄積が可能など様々なメリットがあります。
近年、D2Cブランドがタレントを起用することで認知拡大や競合類似商品との差別化を実現しています。
では、D2Cブランドがタレントを起用するメリットを説明した上で、芸能人とコラボすることでブランド強化に取り組む10のD2Cブランドを紹介します。
タレントを起用する理由
D2Cブランドが多く立ち上がる中、数ある類似商品の中で自社ブランドを選んでもらうために、認知と差別化の重要性が増しています。
そこで、様々なメディアで活躍する有名人を起用することで、消費者に強いインパクトを与え、ブランドをより強く記憶に残すことが期待できます。
記憶に残ることで想起につながり、さらにファンによるTwitter、Instagram、TikTokeなどSNSでの拡散の効果もあり、口コミや購買率の上昇が見込めるでしょう。
以下では、これらの効果を活用し認知拡大や購買率アップに取り組むD2Cブランドを挙げていきます。
1.DROAS
運営会社：株式会社I－ne
起用タレント：新木優子
ジャンル：ヘアケア
DROASは、地球の美の贈り物である泥に着目したヘアケアブランドです。皮脂への吸着効果のある泥が余分なものを優しく洗い流し、また泥の豊富なミネラルと美容液成分が髪のダメージを補修します。
運営元の株式会社I－ne（アイエヌイー）は他にBOTANIST、YOLUなど一度は聞いたことのあるような人気シャンプーを手掛けるビューティーテック企業です。
泥のシャンプーDROASのCMで起用されたのは、新木優子さんです。リンクはこちら。
フランス風な世界観で統一されたCMでは、白を基調としたお洒落なお店に入店した新木さんがDROASのシャンプーを体験し、そのさらさらな仕上がりにうっとりとする姿が描かれています。新木さんの綺麗な髪がなびく様子と共に「さらさらさ～」というセリフが印象的です。
泥に着目した自然派ヘアケア商品ということから、白や薄い青を基調とした清楚な色合いのCMです。清純なイメージのある新木さんがナチュラルな美をサポートする商品のイメージを印象付けているようです。
同時に、新木優子さん度を診断する「新木優子度診断」とDROASシャンプーのプレゼントキャンペーンを実施。SNSでも新木さんのCMを見て応募した、などの声が見られました。
ナチュラルなイメージのある新木さんに憧れがあり、自然派商品を好む女性層へアプローチする狙いがあったと思われます。
2.MEDULLA
運営会社：株式会社Sparty
起用タレント：伊藤千晃
ジャンル：パーソナライズシャンプー／リペア
パーソナライズヘアケアのMEDULLAは、実に5万通りの組み合わせから消費者ひとりひとりの髪質に合わせた商品を提案する商品です。スマホで髪質診断に答えることで、専任のスタイリストがパーソナライズされた処方を作ります。
運営会社は「パーソナライズ×D2C」を基軸とした事業展開を行う株式会社Spartyです。2021年8月に総額約41億円の資金調達を明らかにしました。
パーソナライズヘアケア「MEDULLA」の他には、パーソナライズスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」、パーソナライズボディメイク「Waitless」といったブランドを展開しています。
MEDULLAがタイアップしたのは元AAAの伊藤千晃さんです。伊藤さんがカスタマイズした処方の、伊藤千晃×MEDULLA 『SPECIAL HAIR CARE BOX』を販売しました。
タイアップ動画では伊藤さんが自宅に届いたシャンプートリートメントセットを受け取り、日常の中で使用する様子が描かれています。また、届いたシャンプーの香りを伊藤さんがうっとりとした表情で嗅ぐシーンも印象的です。
明るい白を基調とした動画で、自然体の美しさをアピールしました。
伊藤千尋さんのMEDULLA限定トークショーも開催され、多くの女性ファンが参加しました。
元音楽グループAAAのメンバーとして人気を博し、今は一児の母として育児にも取り組む伊藤さんを起用することによって、同世代のファン層にも認知を広げる狙いが合ったのではないでしょうか。伊藤さんのナチュラルさも、自分らしい魅力をサポートするパーソナライズヘアケア商品に適しているように思えます。
3.BIOLISS
運営会社：株式会社コーセー
起用タレント：新垣結衣
ジャンル：シャンプー
BIOLISSは「髪も、未来も、美しく」というコピーに象徴されるように、植物の恵みから生まれたシャンプーでありながら、購入金額の一部が自然保護活動のサポートに役立てられる商品となっています。
ローズマリーウォーターをはじめとするボタニカル成分で髪を水分パックし、髪のうるおいとツヤを引き出します。
運営会社は雪肌精やジルスチュアート、アディクションなど国内有名化粧品を手掛ける株式会社コーセーです。
BIOLISSのCMに起用されたのは、国民的人気を誇る女優の新垣結衣さんです。瑞々しい植物の恵みを集めたBIOLISSと、新垣さんのツヤとうるおいのある髪にフォーカスするシーンが印象的です。
背景や新垣さんの衣装など白を基調とし、植物の緑や水が自然の恵みからくる髪のうるおい、ツヤを表現しています。
新垣さんの「ビオリスで、＃うるぷるぷるん」というセリフも印象的で、ボタニカルヘアケア商品に適した清純で自然派な雰囲気に、髪のうるおいを強調しているのが分かります。
新垣結衣さんといえば、だれもが知る国民的女優ですから新ブランドとして打ち出すBIOLISSを広く認知させたかったのではないでしょうか。また、清純な新垣さんのイメージもボタニカル商品に合っています。
4.BULK HOMME
運営会社：株式会社バルクオム
起用タレント：木村拓哉
ジャンル：メンズスキンケア
BULK HOMMEはメンズ向けのスキンケア商品を中心に、パーソナルケア商品を展開するD2Cブランドです。
運営会社は株式会社バルクオム。2020年9月には丸井グループなどから総額15億円を調達しました。
「メンズスキンケアの、ベーシックであり続ける。」をコンセプトに、シンプルなパッケージで確かな品質（中身＝BULK）で勝負しているブランドでもあります。
BULKHOMMEがコラボしたのは、キムタクの愛称で知られる元SMAPのメンバー、木村拓哉さん。
テレビCMでは「自信があるから目線が上がる、いまこそ自分らしい進化を」というメッセージを、木村さんの凛々しい表情で表現しました。
コントラストの強い白黒動画で、はっきりとした陰影がスタイリッシュな雰囲気を印象付けてたように思えます。現在、動画は非公開となっています。
木村拓哉さんは国民的タレントであり、幅広い層の男性へ商品の認知を広げる狙いがあったのではないでしょうか。
また、BULK HOMMEの「基準であり続ける」というコンセプトも、誰もが憧れる男性である木村さんには適しているように思われます。
5.LOVE CHROME
運営会社：株式会社 YC・Primarily
起用タレント：千賀健永（Kis-My-Ft2）
ジャンル：ヘアコーム
ラブクロムは、「美髪を守る」をコンセプトに作られた高級ヘアコームで、日本の「JP CHROME-TECH®」という工業技術を活かしたなめらかな表面加工や静電気の拡散機能を実現しています。
また、先端が球状となっており地肌へのダメージを軽減しており、スムーズなくし通りで優しく髪を解きほぐすダメージレスなヘアケアをサポートする商品となっています。
運営元の株式会社 YC・Primarilyは、2007年創業のサロン事業、美容メーカー、コンサルティングを手がける会社です。
ラブクロムが起用したのは、Kis-My-Ft2の千賀健永さん。ホームページでのバナーの他、TVCMでラブクロムの実現する美髪ケアをアピールしました。
TVCM「世界でいちばん、大切な髪に」編では、女性視点から、正面に座った千賀さんが髪をといてくれる彼氏感のある動画となっています。お風呂上りの千賀さんと暮らしているかのようなやり取りの中で、ラブクロムの特徴的な機能や使用感が伝わる内容となっています。
千賀さんの彼氏感が味わえるCMで、ラブクロムの商品を使って欲しい若い女性ファンへ商品を強く印象付ける狙いがあったのではないでしょうか。また、CMも温かい色温度や柔らかい雰囲気に終始しており、髪に優しいケアが叶う当商品の魅力と合っていたように思います。
Twitterなどでも千賀さんのグッズと並べて購入したラブクロムの写真がツイートされるなど反響が見られました。
6.CANADEL
運営会社：プレミアアンチエイジング株式会社
起用タレント：米倉涼子
ジャンル：オールインワンスキンケア
CANADELは、大人の女性のエイジングケアをサポートするオールインワンのスキンケアブランドです。
「エイジングケアを、もっと身近に、もっと確かに」をコンセプトに、こだわりの成分で大人の女性の素肌と生き方にアプローチします。
運営会社はクレンジングバームのDUOなどを手掛ける日本の化粧品メーカー、プレミアアンチエイジング株式会社です。
CANADELのCMに起用されたのはドラマなどでも多く活躍する女優、ファッションモデルの米倉涼子さん。
CMでは、TABU（タブー）という楽曲に載せて手足を大きく動かすコミカルな動きで「ぬれ！」を連呼し、「このオールインワンは、反撃する」という大胆なメッセージを伝えました。
こちらの動画は第二弾になりますが、第一弾から引き続き加藤茶さんを模した「ちょっとだけよ」のセリフとポーズも印象的です。
2020年9月より首都圏及び地方主要都市で放映された第一弾のCM後には、前期末時点で約600店舗であった配荷店舗数が約8,000店舗まで増加しました。（参照）
知名度の高い米倉さんを起用することでブランド認知度の向上にダイレクトに影響を及ぼしたようです。
また、大人の女性の素肌、生き方を応援するという意味においても米倉さんに憧れる同年代の方にアピールする狙いがあったと思われます。
7.FUJIMI
運営会社：トリコ株式会社
起用タレント：広末涼子
ジャンル：美容サプリ
FUJIMIは、「美しさをわたしらしく」をコンセプトに、ひとりひとりに合わせた処方のパーソナライズ美容サプリメントを中心としたD2Cブランドです。
FUJIMIパーソナライズサプリメントは、個々の美容分析をもとに「本当に必要な5粒」の組み合わせでサプリメントを提案します。
運営会社はパーソナライズされたサプリメント、プロテイン、フェイスマスクなどを手掛けるトリコ株式会社です。
なお、トリコ株式会社は2021年2月に化粧品大手の株式会社ポーラによって買収されたことが明らかにされています。
FUJIMIがTVCMで起用したのは広末涼子さん。美しい素肌とデコルテをあらわにした広末さんが、FUJIMIのサプリメントをブレスレット、ネックレス、イヤリングなどジュエリーのようにまとう姿が特徴的なCMとなっています。
透明感たっぷりの広末さんの素肌と、繊細な世界観と共に「私の肌から、目を離さないで」というセリフも印象的です。
広末さんの圧倒的な透明感のある素肌と、変わらない美貌で内側から美をサポートするサプリをアピールしました。
やわらかく洗練された音楽とピンクを基調とした動画になっており、ブランドイメージと広末さんの女性らしいしなやかさを押し出したCMとなっています。
40代の広末さんを起用することで、年を重ねても輝く変わらない美しさと変わり続ける美しさのアピールや、同世代の女性層への認知度向上を狙ったものと思われます。
8.BASE FOOD
運営会社：ベースフード株式会社
起用タレント：山神アリシア
ジャンル：食品
BASE FOODは、一食に必要な30種類の栄養素が全て入った完全栄養食のパンです。
サラダ、主食、おかずなど栄養バランスを考えて食事を用意したり購入したりしなくても主食のパンのみで体に必要な栄養を効率よく摂取できるよう設計されており、現代人の忙しい毎日の健康をサポートします。
運営会社は、「酒食をイノベーションし、健康を当たり前に」を理念に完全栄養食の開発・販売を手掛けるベースフード株式会社です。
ベースフード株式会社は、2022年11月に上場しました。
BASE FOODのテレビCMに起用されたのは、モデルの山神アリシアさんです。
CMでは、「Monday, Tuesday, Wednesday, Everyday 〜 , BASE BREAD♪」という軽快なオリジナルソングに合わせて、7パターンの服装のアリシアさんが登場し、忙しい毎日の朝食にBASE BREADを取り入れる様子が描かれています。
軽やかなBGMと合わせて、全体の色味は黄色ベースに明るい雰囲気で統一されています。笑顔でパンをほおばるアリシアさんの表情からも、手間暇かけることなく栄養を摂取することで、頑張らずに楽しく健康になれるというメッセージが伝わってきます。
アリシアさんを起用することで、美や健康に気をつけたい、でも美味しいものが食べたい、できるだけ手間をかけたくない、という同年代の若い女性たちにブランドを印象付けたかったと思われます。
9.nosh
運営会社：ナッシュ株式会社
起用タレント：池田エライザ
ジャンル：食品
nosh（ナッシュ）は、健康に配慮された冷凍弁当が直接自宅に届けられることで、電子レンジで温めるだけで健康的な食事ができるサービスです。
WEB上で60品の食事・スイーツからメニューや任意の頻度を選択すると、調理後に冷凍で食事が届く仕組みとなっています。
運営会社は、「社会全体を健康に」を理念にnoshの製造と販売を行っているナッシュ株式会社です。
noshのWEBCMに起用されたのは、女優・歌手・ファッションモデルなどとして活躍する池田エライザさんです。
「ナッシュで楽にヘルシーに」という可愛らしく軽快な曲と共に、池田さんが自宅に届いたnoshを電子レンジで温めるだけで手間なく楽しむ様子が描かれています。
池田さんが多種多様なメニューの中で楽しそうに回る演出で、冷凍弁当らしからぬメニューの多様さと華やかさが伝わります。華やかな印象がある池田さんもそのPRに適任なのではないでしょうか。
池田さんを起用することで、同年代の女性ファン層への認知度向上を狙ったものと思われます。
10.CoCo Gourmet（ココグルメ）
運営会社：株式会社バイオフィリア
起用タレント：吉田鋼太郎
ジャンル：ペットフード
CoCo Gourmet（ココグルメ）は、獣医師監修の国産ドッグフードのD2Cブランドです。
栄養バランスが優れているほか、人間の食品と同じ基準、設備で作られていることが特徴です。また、愛犬の体型や食事量に合わせて、様々なメニューやセットから適したものを選ぶことが出来ます。
運営会社は、人と動物が共に幸せになる社会に向けて、ペット関連事業を展開する企業、株式会社バイオフィリアです。
CoCo Gourmetの他、キャットフードブランドのミャオグルメやペットの飼い主のためのアルバムアプリ「ぺっとる」などを展開しています。
CoCo GourmetのテレビCMに出演したのは、日本の俳優、演出家である吉田鋼太郎さんです。動画のリンクはこちらです。
CMでは、飼い主にご飯をもらったワンちゃんに扮した吉田さんが、CoCo Gourmetの新鮮なお肉と野菜の美味しさを伝えました。
小さなワンちゃんが吉田さんに返信して勢いよく美味しさを語る様子は、印象に残るものとなっています。
2020年に一般社団法人ペットフード協会が行った調査によると、ペットを飼っている年代で最も多いのは50代になります。
よって、これらの世代へブランドを印象づけたかったことから吉田さんを起用したのではないでしょうか。
おわりに
D2Cブランドで有名タレントを起用し、認知拡大や差別化に努める企業が増えてきています。
自社のブランドイメージや狙いたい層を意識して適切なキャスティングを行うことで、配荷店舗数の急激な増加など、認知度向上に大きく貢献した例もあります。
類似競合製品の中から自社ブランドを印象付ける方法として、タレントを起用した広告を検討してみると良いでしょう。
