百貨店に出店したいビジネス担当者必見!百貨店出店の仕組み・出店形態・メリット・注意点・流れを公開!

現在の百貨店ビジネス

百貨店の閉店を多く目にする今、百貨店ビジネスへの参入に二の足を踏んでしまうビジネス担当者も多いのではないでしょうか。実際、2021年のデータをみると、百貨店の売上高はここ30年で5兆円減少しています。

しかし、市場動向を詳しく見てみると、依然として百貨店はビジネス規模を拡大するポテンシャルに溢れたチャネルということがわかります。

まず、百貨店は、「高所得、高い消費意欲、高い情報感度」の顧客を持っています。国内における富裕層・超富裕層は増加しており、2021年には伊勢丹新宿本店の買い上げ上位顧客5%による買い上げが全体の売上の約50%になりました。

次に、インバウンド富裕層です。2023年8月には、百貨店のインバウンド売上高はコロナ前2019年を越し、313億円になりました。

このように、百貨店に出店すれば、国内外の富裕層に向けたアプローチを広げることができます。

さらに、 百貨店側も新しい取り組みを行い、顧客層の拡大・LTV向上を目指しています。例えば、三越伊勢丹や阪急阪神百貨店では、デジタルを活用した店頭とECの顧客・製品データの一元化戦略を立てました。

本記事では、今後百貨店ビジネスの開拓を視野に入れるビジネス担当者向けに百貨店ビジネスの全貌や攻略法について解説していきます。

百貨店ビジネスにかかるコスト

百貨店ビジネスと聞いて、「テナント料を払わず、販売売上の一部をマージンとして払う」仕入れ販売モデルを想像する方は多いのではないでしょうか。しかし、近年、丸井百貨店など、テナント料の支払いを求めるショッピングセンター型ビジネスモデルをとる百貨店が多くなってきています。

ただ、依然として従来のテナント料を支払わない仕入れ販売モデルを採用する百貨店も存在します。そのような百貨店ではテナント料がかからない為、直営店と比べ初期コストを大幅に削減することが可能です。

また、百貨店における販売売上のマージンは30~35%と、バラエティストア(40~50%)やドラッグストア卸し・小売り合計(30~50%)と比べて、かなり低いことが特徴です。

百貨店のビジネス形態がどの形であったとしても、売り場の設営費用に加え、販売員の派遣費もコストになります。

他チャネルと比べた百貨店出店のメリット・デメリット

次に、ドラッグストアなどの他チャネルと比較した百貨店のメリットです。主なメリットは以下の3つでしょう。

  1. 百貨店の顧客層へのアプローチができる
  2. 顧客のエンゲージメントを高められる
  3. 棚や商品の発売をブランドがコントロールできる

一つずつ見ていきましょう。

1. 百貨店の顧客層へのアプローチができる

前節にも触れた「高所得、高い消費意欲、高い情報感度」を持つ顧客層や、富裕層インバウンドの二つの顧客層に加え、把握したいポイントが2点あります。

1点目は外商の存在です。外商とは、百貨店の場以外で製品を購入する優良顧客のことで、一般的に百貨店の売上の2~3割を占めると言われています。

2点目はライブコマースに伴う国境を越えた富裕層顧客の存在です。2020年のデータによると中国国内のライブコマースの市場規模は17兆円に拡大しています。これをうけて、阪神阪急百貨店では中国人インフルエンサーを活用した売上施策を行いました。

プレミアムブランドの担当者にとっては、この顧客層へのアプローチの容易さは魅力ではないでしょうか。

2. 顧客のエンゲージメントを高められる

販売員を通じて顧客とのエンゲージメントを高めることができます。具体的には、ブランドのストーリーや商品の細やかな説明をすることです。それによって、LTV(ライフ・タイム・バリュー)の向上や顧客のファン化が見込めます。

3. 棚・商品の発売をブランドがコントロールできる

ドラッグストアなどの小売店に卸すのとは異なり、棚や店頭展開、新商品の発売タイミングをブランドがコントロールできます。

デメリット

先ほど述べたように、百貨店では売り場に支払うテナント代はかかりません。しかし、ブランドの世界観を表現するカウンター什器への大規模な投資や、百貨店に払う売上マージンに加えて、販売員の派遣・教育費用が必要になるため、継続的な投資が必要です。その投資額を回収するためには店舗を増やし、売上を伸ばす必要があるため、長期的な視点でのビジネス戦略が必要になります。

百貨店に出店すべきブランドの特徴

さて、百貨店に出店するメリットが掴めましたでしょうか。次に、どんなブランドが百貨店に向いているかについてまとめます。ご自分の担当しているブランドが当てはまっているか考えてみましょう。

以下の3点が百貨店の出店に向いているブランドの大きな特徴です。

  1. 競合ブランドの中で高付加価値・プレミアム価格志向
  2. ブランドストーリーや便益を伝え、ロイヤルユーザーを育てるビジネスモデル
  3. 百貨店の顧客層を開拓し、ビジネス規模を拡大したいブランド

上記を満たしていれば、どのような規模・タイプのブランドであっても百貨店の出店を考える余地があります。実際、過去の成功事例を見てみても、 海外ブランドやDtoCブランド、直営店やECを通じて成長してきたブランドなど、ブランドの規模・タイプは様々です。

実際に過去の成功事例を見てみましょう。

Fatuite コスメブランド

2021年ローンチ後2023年まで、常設店を持っていなかったコスメブランドFatuite。あべのハルカス近鉄本店、伊勢丹新宿店などの百貨店のポップアップの定期開催など、ブランドを着実に育て、2023年10月に常設店をオープンさせます。ローンチ直後の新ブランドが百貨店をきっかけに伸びた事例です。

他にも、スキンケアDtoCブランド(meeth, norm+)や海外ブランド(花西子)なども百貨店を活用して売上を伸ばした代表例です。

百貨店の出店条件

百貨店で出店するには、バイヤーに注目される必要があります。

前述した通り、百貨店は売上のマージンで主な利益を得ているため、必然的に、高い売上を立てる見込みのあるブランドがバイヤーに注目されます。

以下2点が具体的な条件です。

  1. 顧客単価を確保できるか:スキンケアなら顧客単価10,000円、などカテゴリーごとに一定の基準があります。
  2. 顧客数を伸ばせるか:百貨店の既存顧客・新規顧客を集客できるかが重要です。
    • 既存顧客の集客:審美眼のある百貨店ユーザーが納得する商品であるかや、商品に独自性、新規性があるかがポイントです。
    • 新規顧客の集客:既存顧客とは異なるユーザーを集客できるインフルエンサー発信のブランドや、インバウンド需要の高いブランド等に強みがあります。

百貨店出店の準備

実際に自社ブランドを百貨店で展開する前に、まず検討すべきなのは、ビジネス戦略上の百貨店チャネルの位置づけです。大きく分けて2つの位置づけの方法があります。

  1.  「売上重視型」:百貨店をチャネル戦略の柱とし、百貨店での売上目標を立てて長期的に投資をしていく
  2. 「広告型」:百貨店を新規ユーザーの認知施策・プロモーション施策と位置付け、売上はオンラインストアや直営店など別チャネルでとる

さらに、チャネルとしての百貨店の活用方法として、

A. ポップアップイベントとしての出店 

B. 常設店

の2つが挙げられます。ブランドのビジネス戦略上の百貨店チャネルの位置づけによって、この2つの活用方法の組み合わせが変わります。

 「売上重視型」の百貨店活用方法

常設店運営がメイン。常設店数の増加・販売員への教育が売上のポイント。新商品発売時などにポップアップイベントを開催。

ブランド例:LVMHロレアルシャネルSK-IIPOLAアルビオン資生堂ルナソル など

具体的事例:YSL BEAUTY ”ROCK YOUR SHINE” 伊勢丹新宿店

伊勢丹新宿店の化粧品フロアに常設店を構えるYSLですが、新作リップの先行発売や、限定復刻版の発売を行うポップアップイベントを1週間のみ行いました。AとBの両方の活用方法の組み合わせが見られます。

「広告型」の百貨店活用方法

ポップアップイベントとしての出店がメイン。常設店は持たず、四半期に一度など継続的にポップアップイベントを実施して認知を獲得。自社・百貨店のオンラインストアや直営店・別チャネル店舗で売上を立てていく。

ブランド例:TAKAMI246st MARKET(D2Cブランド), Her lip to(インフルエンサーブランド)、KAPOK KNOT(D2Cブランド)

具体的事例 : Her lip to

基本的に自社ECサイトからのみの販売を行っている、高級アパレルのHer lip toは百貨店に常設店を持たないが、定期的にポップアップイベントを行っています。2018年には伊勢丹新宿で、2019年に阪急梅田本店で、ポップアップイベントを行いました。

獲得したい顧客像やブランドイメージを考えつつ、ビジネス戦略の中で売上成長と広告投資回収、PLのモデルを見て、判断していくことになるでしょう。

百貨店ごとの強み

次に、どの百貨店に出店するかを考えましょう。百貨店により強みがあるため、戦略的に検討する必要があります。

伊勢丹新宿本店
(東京都)
超富裕層・富裕層、なかでも30〜40代の“新富裕層”の囲い込みに強み。ファッションの品揃えにも強く、ラグジュアリーブランド・時計・宝飾品売り場が充実。化粧品にも力を入れており、度重なる売り場面積の拡大を行う。化粧品のブランド数は最大級のブランドライナップを誇る。
阪急うめだ本店
(大阪府)
関西の中で人気トップの「ファッション先導型店舗」で、化粧品売り場の広さは西日本最大級。ファッションとコスメ関連の商品力が高い。阪急うめだ本店限定品や先行販売を取り扱うなど独自性も高く、西日本のみならず全国の富裕層を集客している。
阪神梅田本店
(大阪府)
食品に強い。食品の売上が2022年度の売り上げの内半分程度を占める。非日常を売り出す阪急うめだと違い、親しみやすさを売り出し、差別化を行う。
西武池袋本店
(東京都)
食品ギフトに強く、ギフトサロン・ギフトコンシェルジュなどが滞在。
JR名古屋高島屋
(愛知県)
ターミナル駅である名古屋駅に直結しているため、20~30代の若い客層に強い。
三越日本橋本店
(東京都)
日本初のデパートならではの伝統・歴史・格式高さが特徴。老舗であることから、美術や呉服のカテゴリにも強い。やや落ち着いた客層。
高島屋大阪店
(大阪府)
50代以上の富裕層に強み。
松坂屋名古屋店
(愛知県)
時計に強みを持ち、売り場面積、売上ともに高い。SDGsに力を入れる。
あべのハルカス近鉄本店
(大阪府)
50代以上の女性層に強みを持つ。EC事業の中ではギフト、食品、化粧品が強み。

上記は一例であり、製品カテゴリ―の他にも顧客層・その土地独自の強みなど、様々な比較項目があります。担当ブランドの特徴に応じて百貨店を選ぶ必要があります。

百貨店出店の流れ 

百貨店ビジネスの流れは大きく分けて3段階に分かれます。この中で、「売上重視型」は1~3を、「広告型」は1と2の繰り返しを行います。

1.ポップアップイベント・トライアル店舗出店

ポップアップイベントやトライアル店舗は、1週間~半年などで行われることが多いです。まずはイベント期間の売れ行きによって、次回イベントの開催・常設店への出店可否が判断されます。

ポップアップイベント開催における検討事項は4点あります。

1つ目は、開催意図・テーマです。例えば、新商品発売の製品イベント、ブランドのコンセプトの体験などが挙げられます。

2つ目は、イベントに参加するユーザーのメリットです。百貨店限定商品、限定サンプル、ここでしかできない体験を用意することなどが例として挙げられます。

3つ目は、ブランドの世界観を表現するためのソフト面・ハード面の管理です。什器の用意、販売員の採用・教育などが当たります。

4つ目は、プロモーションによる集客です。デジタル広告を使った百貨店へ集客や、PRリリース、セグメント施策・インフルエンサー招待、ライブ配信などがこれに当たります。

2. 百貨店でのオンラインストアへの出店

百貨店でもオンライン販売を強化することが大事です。イベントと同時にオンライン販売を開始し、オンラインストアに誘導することで常設店がなくても百貨店での顧客の囲い込みを狙うことができます。

3. 常設店出店

出店後も、定期的な店頭什器のリニューアル・更新や販売員への投資が必要になります。例えば、店頭でのライブ配信や店頭の先行発売、店頭サンプルの充実化など店頭で新しいニュースを常に作りつつ、店頭でしか得られない体験を設計することで顧客を囲い込むことが必要になるでしょう。さらにOMO施策(店頭とオンラインストアを融合し、顧客体験の向上を目指す施策)も大切になってきます。

おわりに

百貨店は、ブランドの顧客層やビジネス規模を拡大することができるポテンシャルが非常に大きいチャネルです。ですが、同時に、ブランドの方向性を長期的に、かつ戦略的に立てることが求められます。 

Brandismはブランドのチャネル戦略、百貨店へのアプローチを進める支援も行っております。 

百貨店出店に向けて伴走してほしい、どのアプローチが自社にあっているかわからない、より効果的・戦略的に出店に向けて動きたい、という場合は一緒に売上に貢献するパートナーとしてBrandismを選んでいただければ、必ず良い結果を生み出せると信じています。

ご興味のある担当者の方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。

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